事件ひとつに、人物が一歩
法廷ものの基本形である「1話1事件」に従いながら、それぞれの事件が主人公がその週に向き合う問いと重なるよう配置されています。事件が単なる題材として消費されず人物の変化と噛み合うため、話を飛ばすと感情の流れが途切れます。手続き劇と成長物語を同じ一話の中に重ねた設計です。
小さなチャンネルから始まり世界に広がったドラマです。毎回異なる事件を扱いながら一人の成長を見失わない構造を見ていきます。
法廷ものの基本形である「1話1事件」に従いながら、それぞれの事件が主人公がその週に向き合う問いと重なるよう配置されています。事件が単なる題材として消費されず人物の変化と噛み合うため、話を飛ばすと感情の流れが途切れます。手続き劇と成長物語を同じ一話の中に重ねた設計です。
この題材でよく使われる手は、主人公を軽んじる人物を置いて葛藤を作ることです。この作品はその手をほとんど使いません。代わりに、善意を持った人たちがそれぞれ違う形で不器用であるがゆえに生じる摩擦を描きます。おかげで葛藤が平板にならず、解決も誰かを罰する形になりません。
放送当時のENAは知名度の低いチャンネルで、初期の視聴率も高くありませんでした。口コミと配信を通じて話数が進むほど視聴者が増えた事例で、放送チャンネルの規模より物語の伝わる力の方が大きく働きうることを示した作品としてよく挙げられます。
脚本のムン・ジウォンは映画『無垢なる証人』の脚本を書いた人で、その作品でも自閉スペクトラムのある人物を中心に据えていました。演出は『浪漫ドクター キム・サブ』シリーズのユ・インシク、主演はパク・ウンビンです。韓国ではENAで放送され、海外ではNetflixで公開されて多くの国の視聴者に届きました。専門職ドラマを長く手がけてきた演出家と、人物を軸に書いてきた脚本家の組み合わせが、法廷ものの事件の構造と成長物語の感情の流れを両立させた背景だとよく言われます。
主人公が自閉スペクトラムのある弁護士だという設定は、放送当時大きな関心を集めると同時に、さまざまな議論も呼びました。障害のある人物を温かく描いて理解を広げたという評価があった一方で、一人の人物の姿が、実際の自閉スペクトラムの多様なあり方を代表しているかのように受け取られかねないという指摘もありました。ドラマの人物は物語のために作られた一人の個人にすぎないことを心に留めて観るのがよいでしょう。自閉スペクトラムの特性や必要な支えは人によって大きく異なります。本作をきっかけに関心を持ったなら、当事者や専門機関が発信する情報もあわせて調べるほうが確かです。
各話の事件はおおむね、依頼が来て、争点が見えてきて、思いがけない視点が現れて判断がひっくり返る、という流れをたどります。この流れを知って観ると、主人公がほかの人とは違うやり方で事件を見る瞬間がどこなのかがよく分かります。ただし作中の法解釈や結論は劇的に整理されたもので、実際の事件にそのまま当てはめることはできません。似たような法律の問題を抱えているなら、ドラマの内容を根拠に判断せず、弁護士などの専門家に相談するのが安全です。
刺激的な展開よりも温かい雰囲気の物語を求める人、1話完結の事件ものが好きな人によく合います。事件の一つひとつは単独でも観られますが、人物の関係と成長は話数を追ってつながっていくので、初めて観るときは順番どおりがおすすめです。重い社会問題を扱う事件もありますが、全体のトーンは明るめで、家族と一緒に観ても負担の少ない作品です。法廷ものに初めて触れる人にも入りやすく、このジャンルの入門作として勧めやすい一本です。1話観終えるごとに、その回の事件で何が大事な争点だったかを話し合ってみるのも、長く楽しむ方法です。
法律用語が頻繁に出てきますが作中で十分に説明されるため、予備知識は不要です。ただし実際の裁判手続きをそのまま再現した作品ではなく、ドラマとして圧縮された部分がある点は踏まえて見る方がよいでしょう。